令和5年度キャリアアップ助成金(正社員化コース)

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、ここ1年で要件がだいぶ変わりました。正直、結構厳しくなったので、「せっかく申請したけど受給できなかった」、「よく分からないから申請をやめてしまった」など、そういう会社様が非常に増えています。

そこで今回は、ここ最近の変更点を踏まえ、令和5年度最新の「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」について、詳しく解説しますので是非参考にしてみてください。

※当記事では、説明をわかりやすくする観点から、有期雇用労働者・無期雇用労働者⇒正社員転換に絞って記事を書かせていただきます。派遣社員⇒正社員転換については説明を省いておりますのであらかじめご了承ください。

※当記事はYouTubeでも解説しています。合わせてご覧いただくとより理解しやすいかと思います。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは

キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは、契約社員、パート・アルバイト、派遣社員などの非正規雇用労働者を、正社員化にした場合にもらえる助成金です。

なので、これから人を採用していきたい企業や個人事業主の方は、是非とも有効活用していただきたい助成金です。

受給額【1年度あたり最大1,140万円】

1人当たりの受給額は以下のとおりです。

・有期雇用労働者⇒正社員で57万円
・無期雇用労働者⇒正社員で28万5,000円

1事業所・1年度あたり20名分まで申請できるので、57万円×20名=1,140万円まで受給可能です。

※令和5年4月以降の転換分から生産性要件による上乗せはなくなりました。

 加算額

上記に加えて、1名あたり以下の加算額も設定されています。

1.派遣社員⇒正社員で28万5,000円
2.対象者が母子家庭・父子家庭で95,000円(有期)、47,500円(無期)
3.人材開発支援助成金の訓練終了後⇒正社員で95,000円(有期)、47,500円(無期)
4.短時間正社員などの制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等をした場合で95,000円

キャリアアップ助成金を受給できる事業主

キャリアアップ助成金全体の要件としては、以下の5つ全てに該当する必要があるので確認してみてください。

① 雇用保険に加入している事業主
② キャリアアップ管理者を置いている事業主
③ キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局の認定を受けた事業主
④ 雇用契約書、賃金台帳、出勤簿などの書類を整備している事業主
⑤ キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主

受給できない事業主

① 労働保険料を納めていない事業主
② 支給申請日前1年間に労働関係法令違反を行った事業主
③ 性風俗関連営業等を行う事業主
④ 暴力団と関わりのある事業主
⑤ 支給申請日、または支給決定日の時点で倒産している事業主
⑥ 支給決定時に、雇用保険に加入していない事業主

キャリアアップ管理者とは

上記要件の中に出てきた「キャリアアップ管理者」について確認しておきましょう。

キャリアアップ管理者とは、各事業所での有期雇用労働者等のキャリアアップを図る取組が積極的に進むよう、事業所ごとに、有期雇用労働者等のキャリアアップに取り組む者として、必要な知識及び経験を有していると認められる者をいいます。

一般的には代表取締役、あるいは他の役員が適任です。

ただし、キャリアアップ管理者は、雇用保険の適用事業所毎に設置する必要があり、一人で複数事業所を兼務することはできないのでご注意ください。いずれか1箇所でのみ就任できます。

キャリアアップ助成金の流れ

厚生労働省HP:キャリアアップ助成金より引用

1.キャリアアップ計画書の提出

キャリアアップ計画書は「いつ頃、正社員転換を行うか」を記載したものです。キャリアアップ管理者を配置し、キャリアアップ計画を作成して、労働局の認定を受けます。提出先は管轄ハローワーク(県によっては労働局助成金センター)になります。

2週間くらいで認定印が押され、提出事業主に返送されてきます。

2.就業規則を改定し、労働基準監督署へ届出(転換規定がない場合)

正社員転換について、転換時期、対象者、手続き(面接や筆記試験など)、要件を就業規則に盛り込み、労働基準監督署に届出ます。

10人未満の事業所の場合は、労働基準監督署への届け出の代わりに、支給申請時に申立書の提出でも可能です。

3.正社員に転換する

就業規則で定めたとおりに面接や試験を行い、労働者を正社員に転換します。賃金3%アップした正社員雇用契約書を作成しましょう。

4.転換後6か月雇用し、賃金を支払う

5.支給申請

転換後6か月分の賃金を支払った日の翌日から2か月以内に支給申請します。

6.助成金の支給決定、振込

支給申請から、都道府県によって、1か月~6か月で支給決定、振込があります。

キャリアアップ計画書の記入例

キャリアップ計画書は比較的簡単に作成できます。記入例を作成したのでよかったら参考にされてください。
※ただし、就業規則の内容により記載事項も若干変わるので、提出する場合は自己責任にてお願いします。

キャリアアップ計画書(記入例)

【1枚目】

【2枚目】

【3枚目】

支給申請のポイント解説

支給申請は正直難しいです。というのも、以下の提出書類を細かくチェックされるので、日ごろから、法令を遵守した労務管理が求められます。

【支給申請時の主な提出書類】

  • 就業規則
  • 雇用契約書
  • 賃金台帳
  • 出勤簿 

審査のチェック項目としては、それぞれの整合性、残業代が正しく計算され支給されているか、その他労働法令違反がないかまで相当細かくチェックされます。

提出書類ではありませんが、残業(時間外労働)がある会社は、労働基準監督署へ36協定の届出も必ず行っておきましょう。

また、上記【キャリアアップ助成金の流れ】で解説したように、支給申請は、正社員転換後6カ月分の給与を支払った後、つまり、全て終わってから支給申請します。よって、間違っていたからといって過去に遡ってやり直すことは違法であり出来ないので、しっかりと準備を整えてからキャリアアップ助成金に取り組むことをお勧めします。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)の失敗事例

社会保険労務士に代行依頼せず、自社で申請する際によくある失敗事例を掲載します。

✅ 申請期限が過ぎてしまった。

シンプルですが、実はこれが一番多い失敗事例だと思います。申請期限は、「正社員としての賃金を6か月分支給した日の翌日から2か月以内」です。くれぐれもご注意ください。

✅直近で解雇や退職勧奨を行った。

これも不支給になる事例です。下記「助成金の対象となる事業主」の⑦にて解説しているので読んでみて下さい。

✅就業規則の記載に不備があった。
  • 転換規定がない
  • 正社員の昇給がない
  • 正社員の賞与・退職金いずれもない
  • 正社員転換後に試用期間が設けられている など
✅残業代を正しく計算できていなかった。

正しく計算し清算すれば支給されます。

✅36協定の届出をしていなかった。

36協定届出なしの残業は労働基準法違反です。提出しましょう。

✅労働保険料を滞納していた。
✅雇用契約書、賃金台帳、出勤簿などの申請書類不備。
✅正社員転換後の昇給時期に昇給していない。※賞与の時期に賞与が支払われていない場合も同様

労働者の処遇改善が図られていない場合など、本助成金の趣旨・目的に沿った取組と判断されない場合には、不支給となる場合があります。

✅大学生アルバイトの期間も通算して6ヶ月で正社員転換した。

学校教育法に規定する学校、専修学校または各種学校の学生または生徒であって、大学の夜間学部および高等学校の夜間等の定時制の課程の者等以外のものであった期間は通算しない

就業規則の規定例

正社員転換制度の規定例です。あくまで参考程度としてください。

第 条(正規雇用への転換)
勤続〇カ月以上の者又は有期実習型訓練修了者で、本人が希望する場合は、正規雇用に転換させることがある。
2 転換時期は、随時とする。
3 代表取締役等の面接及び昇格試験を実施し、合格した場合について転換することとする。

助成金の対象となる労働者

以下は厚労省のパンフレット「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)」からの抜粋です。わかりにくい部分もあるので、弊社にてポイントを赤字で追記しました。

次の①から⑨までのすべてに該当する労働者が対象です。

① 次のア・イのいずれかに該当する労働者であること。※わかりやすさを重視するため派遣社員に関する要件は省きます。

ア 支給対象事業主に、賃金の額または計算方法が正規雇用労働者(正社員)と異なる雇用区分の就業規則等の適用を通算6か月以上受けて雇用される有期雇用労働者等

イ 支給対象事業主が実施した有期実習型訓練を受講し、修了した、賃金の額または計算方法が正規雇用労働者(正社員)と異なる雇用区分の就業規則等の適用を受けて雇用される有期雇用労働者等

② 正規雇用労働者(正社員)として雇用することを約して雇い入れられた有期契約労働者等でないこと。

「正社員求人に応募」し、はじめから正社員になることを前提に採用されている場合は、助成金の対象外です。

③ 正社員化の前日から過去3年以内に、当該事業主の事業所または資本的・経済的・組織的関連性からみて密接な関係の事業主において正規雇用労働者として雇用されたことがある者、請負もしくは委任の関係にあった者または取締役、社員、監査役、協同組合等の社団もしくは財団の役員であった者でないこと。

正社員化の前日から過去3年以内に、親会社から転籍して、子会社で期間期間社員になった労働者は、助成金の対象外です。

④ 正社員化を行った適用事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者であること。

3親等以内の親族(配偶者と曽祖父、ひ孫、伯父伯母(叔父叔母)、甥姪)は対象外です。

⑤ 支給申請日において、正社員化後の雇用区分の状態が継続し、離職していない者であること。

本人の都合による離職および天災その他やむを得ない理由のために事業の継続が困難となったことまたは本人の責めに帰すべき理由による解雇は、離職していても可。

⑥ 支給申請日において、有期雇用労働者または無期雇用労働者への転換が予定されていない者であること。

⑦ 正社員化後の雇用形態に定年制が適用される場合、正社員化日から定年までの期間が1年以上である者であること。

60歳定年の場合には、1年以上前の59歳前(58歳まで)に転換していること。

⑧ 支給対象事業主または密接な関係の事業主の事業所において定年を迎えた者でないこと。

⑨ 障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律施行規則に規定する就労継続支援A型の事業所における利用者以外の者であること。

助成金の対象となる事業主

以下は厚労省のパンフレット「キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)」からの抜粋です。わかりにくい部分もあるので、弊社にてポイントを赤字で追記しました。

有期雇用⇒正規雇用、無期雇用⇒正規雇用で次の①から⑬までのすべてに該当する労働者が対象です。

① 有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換する制度を、就業規則または労働協約 その他これに準ずるものに規定している事業主であること。

② 上記①の制度の規定に基づき、雇用する非正規雇用労働者を正社員化した事業主であること。

③ 上記②により正社員化された労働者を、正社員化後6か月以上継続雇用し、当該労働者に対して正社員化後6か月分の賃金を支給した事業主であること。

④ 多様な正社員への転換の場合にあっては、上記①の制度の規定に基づき正社員化した日において、対象労働者以外に正規雇用労働者(多様な正社員を除く。)を雇用していた事業主であること。

通常の正社員転換であれば、気にしなくてOK。多様な正社員への転換の場合にあっては、他に正規雇用労働者がいないとダメです。

⑤ 支給申請日において当該制度を継続して運用している事業主であること。

⑥ 正社員化後6か月間の賃金を、正社員化前6か月間の賃金より3%以上増額させている事業主であること。

⑦ 当該正社員化日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、当該正社員化を行った適用事業所において、雇用保険被保険者を解雇等事業主の都合により離職させた事業主以外の者であること。 

⑧ 当該正社員化日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、当該正社員化を行った事業所において、雇用保険法第23条第1項に規定する特定受給資格者(以下「特定受給資格者」という)となる離職理由のうち離職区分1Aまたは3Aに区分される離職理由により離職した者(以下「特定受給資格離職者」という)として同法第13条に規定する受給資格の決定が行われたものの数を、当該事業所における当該転換を行った日における雇用保険被保険者数で除した割合が6%を超えている事業主以外の者であること。

上記は、特定受給資格者として当該受給資格の決定が行われたのが3人以下である場合を除きます。実際に該当するケースは少ないですが、心当たりがある場合はハローワークにて確認することをお勧めします。

⑨ 上記①の制度を含め、雇用する労働者を他の雇用形態に転換する制度がある場合にあっては、その対象となる労働者本人の同意に基づく制度として運用している事業主であること。

労働者本人の同意なく正社員化した場合には不支給です。

⑩ 正規雇用労働者に転換した日以降の期間について、当該労働者を雇用保険被保険者として適用させている事業主であること。

正社員化の前は雇用保険加入要件はありません。

⑪ 正社員化日以降の期間について、当該労働者が社会保険の適用要件を満たす事業所の事業主に雇用されている場合、社会保険の被保険者として適用させていること。社会保険の適用要件を満たさない事業所の事業主(任意適用事業所の事業主、個人事業主)が正社員化させた場合、社会保険の適用要件を満たす労働条件で雇用している事業主であること。

⑫ 母子家庭の母等または父子家庭の父に係る加算の適用を受ける場合にあっては、当該正社員化日において母子家庭の母等または父子家庭の父の有期雇用労働者等を転換した事業主であること。

20歳未満の子もしくは一定程度の障害がある子等を扶養している母子家庭の母または父子家庭の父。

⑬ 勤務地限定正社員制度、職務限定正社員制度または短時間正社員制度に係る加算の適用を受ける場合にあっては、キャリアアップ計画書に記載されたキャリアアップ期間中に、勤務地限定正社員制度、職務限定正社員制度または短時間正社員制度を新たに規定し、有期雇用労働者等を当該雇用区分に転換した事業主であること。

通常の正社員転換であれば、気にしなくてOK。

キャリアアップ助成金 情報元(厚生労働省HP)

キャリアアップ助成金(厚生労働省のサイト)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

□ダウンロード案内

1:「キャリアアップ助成金Q&A(令和5年度)」(令和5年4月12日更新)

https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001083217.pdf

2:「キャリアアップ助成金のご案内(パンフレット)」(令和5年4月10日更新)

https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001083208.pdf

3:「(正社員化支援)キャリアアップ助成金のご案内(パンフレット)」(令和5年4月13日)

https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001087356.pdf

4:「キャリアアップ助成金のご案内(概要)」(令和5年3月31日)

https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001082763.pdf

5:申請様式ダウンロード

令和5年度申請様式(令和5年4月1日以降の取組に係る様式)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118801_00010.html

令和4年度申請様式(令和4年12月2日~令和5年3月31日の取組に係る様式)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118801_00009.html

雇用関係助成金に係る共通の要件等に関する申請様式

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index_00018.html

6:東京労働局 キャリアアップ助成金 必要書類チェックリスト

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/kakushu_joseikin/_118530/_120558_00003.html

令和5年度雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000758206.pdf

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